建築家は徹夜作業にとりかかる。〇七年一月、医院と建築工房は設計契約を交わした。新築も検討したが、商店が並ぶアーケード街のまんなかに解体の建設機材や杭打ち機をレッカー車で搬入するだけで莫大なコストと時間を要する。まわりの商売にも迷惑をかけるだろう。近隣の感情を害したくない。「リファインでいく」と建築家は断を下した。古い医院は、アーケードに面した二階を飲食店や診療所が入るテナントに変え、中庭を設ける。三〜五階はファミリータイプを含む賃貸住戸へと「用途転換(コンパーション)」する。
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震災で全壊の判定を受けた建物の本格的な再生が始まった。設計図面と実際の建物のズレを整えて、神本は正確な3Dパースを完成させた。一方で術造検査を念入りに行なった。各階三ヵ所のコンクリートのコア抜きで、圧縮強度を確かめる。破壊検査での鉄筋のかぶり厚、さび、配管、コンクリートの中性化度などをチェック。ダメ押しに一部のモルタルを剥がして、目視で調べる。建築家は「嫌な予感」がした連結部分で建物を切り離し、階段をつけ、商店街から直接二階へ行けるように設計した。コンクリートの圧縮強度は最小値の部分でも従来の補強手段でクリアできる範囲内だった。